かなしい

買ったばかりの携帯を落下させてしまった。時悪しく足場はコンクリート。画面に傷が入らなかっただけまだましかもしれないが、本体のうち2つの角が明らかに削れてしまった。
手袋をしたままの手から滑り落ちてゆく携帯が、私の目にはスローモーションで映されていた。ふたりの出逢いと、これから一緒に過ごすはずだった楽しい日々が走馬灯のように駆け巡った。まだ出逢って5日目だっていうのに、早すぎるよ。ひどいよ、そんなの。私を置いていかないで――
そんな悲痛の叫びも虚しく、携帯は地面にぶつかった。開いていた携帯は、すっと目を閉じた*1
しばらくして拾い上げた携帯。そこには、その瞬間の生々しい痛みを想起させる白い傷跡が、くっきりと刻まれていた。

*1:閉じたのは実話