恋しいひと、にくらしい人

朝日新聞土曜版(赤い方)の一面「愛の旅人」が好きである。今日は歌人斉藤茂吉とその弟子・永井ふさ子がとりあげられ、ふたりの間に交わされた歌や書簡が紹介されていた。研究対象たり得るような文学者になると、当人は既にこの世にいないとは言え、超プライベートな恋文まで研究の資料とされ、細かく分析されてしまうのか。なんだかぞっとするところがある。
それにしても茂吉先生のあまりの情熱に驚いた。故郷に帰って見合い結婚を決意したふさ子さんに対して送った歌はこれ。

こひしさのはげしき夜半は天雲をい飛びわたりて口吸はましを

茂吉からふさ子さんに送られた手紙の一節がこれ。ふたつめは知ってた。

あなたはやはり清純な玉

ふさ子さん! ふさ子さんはなぜこんなにいい女体なのですか

それにしても女体って。
記事では「手紙の文面の真摯さ、ひたむきさは茂吉の情熱をよく伝える」「若い美貌を手中に収めた有頂天ぶりもあからさまに表れる」と形容されていたが、何と言いつくろっても、やはり踏み込んではならない人の内面にまで踏み込んでいる気がした。つまるところはずかしい。
ふたりの合作した歌が残っているそうだ。きれいで、きれいすぎて悲愴さが漂うような歌だ。

光放つ神に守られもろともにあはれひとつの息を息づく